統計のワナを学ぶための優良コーナー「統計の落としアナ」、総務省で提供

2010/07/08 12:10

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統計の落としアナ先に【「こんにゃくゼリーの窒息、重症率85%」は本当か、適切な表現なのか】でも示したように、統計や計算値、特に各種グラフは時として実態と異なるイメージ、事実、さらには意図的な印象上の操作による錯誤を読み手に与えることがある。図画はビジュアルイメージとして状況を把握しやすく説得力があるため、理解を深める・認識のハードルを下げるには欠かせない手段ではあるが、同時に正しい使われ方でないと、誤解や混乱を招くことになる(某評論家I氏の名を冠しているテレビ番組が好例だ)。多種多様の統計データを提供している総務省統計局では昨今の状況に応じてか、理解しやすい形で「統計の落としアナ」を知ってもらう啓蒙サイトとして【なるほど統計学園】を提供している。


↑ なるほど統計学園トップページ。なんだか総務省の公式コンテンツとは思えない(良い意味で)イメージ
↑ なるほど統計学園トップページ。なんだか総務省の公式コンテンツとは思えない(良い意味で)イメージ

同サイトでは「統計」について多種多様な視点から分かりやすく解説を加えている。

・統計 そこが知りたい……統計の意味、役割、種類、歴史などを解説
・統計のできるまで……調査の企画や実施、集計、公表スタイルなどを紹介
・統計用語辞典
・みんなのQ&A
・統計の落としアナ……統計上のトリックや注意事項をアニメで紹介
・統計 テストでの出題実例

など

特に注目、必見なのは【統計の落としアナ】。現在6つのエピソードが公開されているが、統計そのもののデータの取得の仕方による注意問題点、グラフを読み解く際の留意点が具体的な例を挙げて優しく、そして分かりやすく説明されている。

↑ 昨今の新聞やテレビ局が行う「電話調査」などの結果でも問題視されている「標本の偏り」に関するお話
↑ 昨今の新聞やテレビ局が行う「電話調査」などの結果でも問題視されている「標本の偏り」に関するお話

↑ 都合の良い作成形式で相手に特定の印象を与える方法。冒頭で触れた「テレビ番組」の場合は図の軸の尺そのものを変えているので、このようなトリックですら無い
↑ 都合の良い作成形式で相手に特定の印象を与える方法。冒頭で触れた「テレビ番組」の場合は図の軸の尺そのものを変えているので、このようなトリックですら無い

↑ 形や色遣いで実態よりもオーバーな違いに見せる方法。もちろん正確な実態を多くの読み手に伝える「統計」「グラフ化」という観点ではしてはいけない手法
↑ 形や色遣いで実態よりもオーバーな違いに見せる方法。もちろん正確な実態を多くの読み手に伝える「統計」「グラフ化」という観点ではしてはいけない手法

新聞や雑誌は何度も読み直して確認が出来るから良いが、テレビの場合は「短時間で状況を把握させる」ためにグラフを用いるのがほとんど。視聴者がグラフの詳細や真偽のほど、さらには自分が感じとった印象が正しいか否かを確認することなく、グラフそのものは画面から消えてしまうため、テレビ番組側の印象操作がしやすいものとなってしまう。

グラフ「ぱっと見で概要を把握してもらう」手法としてはグラフ以外に写真・カット(イラスト)などもよく用いられる。例えば【原油流出現場を独りわびしく眺めるオバマ大統領、でも実は……】でも紹介したように、容易に印象操作がされうる。その事実が露呈すると、やはり記事中にあるように「省いたもの、軽視したものは重要で無かった(と自分達が判断した)」「●×を理解してほしかった」と、開き直って恣意的な印象操作を肯定する説明をするのが常というもの。

本来「短時間で多くの人に正しい状況を概要だけでも把握してもらう」統計データ、特にグラフが、悪用される場面が多いのが現状。便利な手段は使われ方次第で怖い武器にもなるという、まさに「諸刃の剣」を体現しているともいえる。統計データ、グラフに興味がある人はもちろん、テレビや新聞で解説用のグラフに目を留める機会のある人は是非、今「なるほど統計学園」を、面倒ならば「統計の落としアナ」のアニメ部分だけでも目を通してほしいものだ。

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