「インターネット調査」は「一般の世論調査」に置き換えられるか!?

2009/05/03 10:55

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調査結果イメージ内閣府は2009年5月1日、世論調査におけるインターネット調査の活用可能性に関する調査結果を発表した。それによると、現時点で「世論調査」が「インターネット調査」に置き換えられるだけの同意性は見られないものの、設問内容次第では活用できる可能性が高いこと、さらにはネットの普及率が高まり技術的な問題が改善できれば、将来において一部項目で利用できる可能性があることを示している(【発表リリースページ】)。


今調査はインターネット経由が2008年6月20日から22日、20歳以上の登録者を対象にインターネット経由で行われたもので有効回答数は1500人。個別面接聴取法によるものが2008年6月12日から29日にかけて20歳以上の層化2段無作為抽出法による対象者に対して行われたもので、有効回答数は6146人。

調査結果の概要をまとめると次のようになる。

1.「一般世論調査上の」、”インターネット利用者”と”非利用者”との違い
・受動的、社会共通意識的な設問は差異が小さい
・能動的、個人志向的な設問は差異が大きい
・「今後の見通し」は差異が縮小する傾向→景気の悪化による認識共有化

2.「インターネット調査」と、「一般世論調査上の」”インターネット利用者”との違い
・「時間のゆとり」に関する設問は差異が小さい
・「豊かさの焦点」「将来への展望」など経済面に関する設問は差異が大きい

一例として、「悩みや不安の内容」について。「老後の生活設計」「家族の健康」などは差異がほとんどないが、「経済的内容」「自分の健康」などの項目には大きな違いがある。
一例として、「悩みや不安の内容」について。「老後の生活設計」「家族の健康」などは差異がほとんどないが、「経済的内容」「自分の健康」などの項目には大きな違いがある。

このような差異がでることについて内閣府側では

・回答者の属性(ネット不利用者は決して少なくない)(【2007年末のインターネット普及率は69.0%・8811万人】によれば2007年末時点でインターネット普及率は69.0%)
・設問毎の回答形式(世論調査は直接聴取、ネット調査は回答者が選択肢を見て回答)
・調査母体、抽出法(世論調査は無作為抽出、ネット調査は募集による回答協力モニタから選別)

などを原因としてあげている。

その上で、「安価かつ短期間で実施できるインターネット調査の活用可能性」について、2005年から調査を続けているが、「現時点で世論調査が直ちにインターネット調査に置き換えられる可能性はほぼない」と結論付ける一方、「設問次第ではそのままできる可能性が高い」「ネット利用率の向上・調査母体の選定などの技術的課題がクリアできれば、一部の設問で将来的に活用できる可能性がある」などとしている。



内閣府のレポートによる結論は以上だが、「世論全体」を対象にした結果を見たい場合、現行の無作為抽出法そのものの精度に関する考察も必要かもしれない。なぜなら、無作為で調査対象を抽出したとしても、データに反映されるのはあくまでも「回収できた回答」に限られるからである。

今件でも「一般の世論調査」では1万人を対象にして、回収数は6146人。逆にいえば3854人分は回収できなかったことになる。各項目についてある項目への賛意を確認する場合、

a.本当の国民全体の賛意の割合
b.世論調査の「調査対象者全体(=1万人)」の賛意の割合
c.世論調査の「回答者(=6146人)」の賛意の割合
d.インターネット調査の賛意の割合

調査イメージではそれぞれ大小の差異が生じる。これまでの前提では、最終的に求めたいのは「a.」で、「a.」≒「b.」≒「c.」。しかし「a.」≒「b.」ではあっても、「b.」≒「c.」足りえるだろうか。インターネットの普及や社会構造の変化(特に他人との接触や個別調査への協力姿勢の考え方)、年齢階層や資産階層、多忙さの差異などを考えると、世論調査で回答しうる層「c.」と、「b.」、そして「a.」との間には、項目によって大きな違いが生じているのではないかという懸念がある(極めてフランクに表現すると「世論調査でちゃんと答える層の年齢階層比って、インターネットに傾倒している層、特に若年層がずいぶん少ないのと違う?」ということ)。

これを「世代間格差」「ジェネレーションギャップ」や「ネットリテラシーの違い」などと断じるのには材料が足りず、また拙速に過ぎる向きがある。しかし今回の発表データは、いわゆる「世論調査」のすべてについて、インターネット調査も含め、色々と考え直す機会を与える良い材料になることに違いはあるまい。

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