【更新】リニア中央新幹線、東京・大阪間を最短67分で移動-JR東海が各種試算を発表
2009/10/14 07:31
【JR東海(9022)】は2009年10月13日、現在同社が建設を予定している超電導リニア線(リニア中央新幹線)における、東京都・大阪市間の建造・運用に関する各種試算を発表した。それによるとJR東海が推進している「南アルプスルート(Cルート)」を用いた場合、東京-大阪間を67分で移動できることが明らかになった。また、長野県が中心に熱望している「木曽谷ルート(Aルート)」や「伊那谷ルート(Bルート)」についてもそれぞれ試算が行われ、その数字が発表されている(【発表リリース】)。
リニア中央新幹線は現行の新幹線の代替交通機関として、主要都市を高速で結ぶこと(「東京-大阪間を約1時間」)を目的としており、超電導式のリニアモーターカーを利用するのが最大のポイント。なお現行では2025年に首都圏-中京圏での営業運転を開始することを目標にしている([超電導リニアによる東海道新幹線バイパスの推進(PDF)])。また、関連費用は現時点ではJR東海が全額自社負担の予定。
この「リニア中央新幹線」について、現在問題視されているのが長野県近辺におけるルートの選定。JR東海側では距離が短く経済的合理性が高いCルートを希望しているが、長野県など一部地域では「諸般事情」から大きく迂回するBルート・Aルートを熱望している(繰り返しになるが建造・運用費はJR東海が全額自己負担予定)。
検討されているルート(Wikipediaより抜粋)
今回発表された試算によると、最短・最良経済的合理性を持つCルートを採用した場合、東京・大阪間は67分での移動が可能となる。これがBルートになると74分、Aルートでは73分になる。
今回発表された、東京・大阪間のリニア中央新幹線に関する各種試算データ
これを、JR東海側が推進しているCルートの値を「1」(基準値)とした場合、A・B両ルートではどれだけ余計な負担がかかり、輸送需要量にどのような変化が生じるかを算出・グラフ化したのが次の図。
JR東海試算による東京都・大阪市間の超電導リニア線に関する諸データ(南アルプス・Cルートとの差異)
運営をするJR東海側からすれば、当然輸送需要量は多い方が良い。それだけ客の入りが良くなり、収益も上がるからだ。その値においてはA・B両ルートはCルートと比べて5%ほどのマイナスが見られ、それ以外の各種費用や時間においては、すべて10%前後の余分な負担がかかってしまうのが確認できる。特にランニングコストを意味する「維持運営費」「設備更新費」の負担が1割近く増加するのは、JR東海にとっては痛手以外の何物でもない。この試算が出た上で、あえてA・Bルートの選択肢をJR東海が選んだとなれば、JR東海の株主から「(想定済みにも関わらず)無意味に余計な負担を生じさせた」として、大きな責任を問われる可能性も否定できない。
一方でA・Bルートにおいては(外見から見た不自然さからも分かるように)地元の活性化などをよりどころとして、関連地域、特に長野県からの熱望が伝えられている。しかし現行の新幹線同様にリニア中央も、東京・大阪などの主要地域を高速で結ぶことこそが一義的存在理由であり、わざわざ迂回し(、さらに「一県一駅」の原則を破ってまで駅を増設し)、特定地域にのみ融通を図る必要性は見受けられない。
一部には「A・Bルートの要望が受け入れられないのなら、長野県内の通過を許可しない」という強硬な意見もあると聞く。そこまで強い意見で無くとも、遅滞行動を取られてしまっては、他の関連地域、さらには国全体の利益を大きく損なうことにもなりかねない。民間企業であるJR東海側が費用を全額負担し、国益にも重要な意味合いを示す当路線においては、仮にそのような状況がエスカレートするのであれば、いっそのことその「障壁」を取り除くのが一番スムーズなのかもしれない。
もし問題がこじれるようであれば、新たにDルートも検討対象にしたほうが?(Wikipediaより抜粋した図に追加)
いわゆる、「急がば回れ」である。
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