「買い物弱者」を支える事業に2/3・上限1億円まで補助金

2010/11/24 19:30


お買いもの経済産業省は2010年11月22日、いわゆる「買い物弱者」と呼ばれる人たちへの対策事業として「買い物弱者対策支援事業の募集を開始すると共に、この公募に対する説明会を11月22日以降開催していくと発表した。公募は同年11月24日から12月15日までに行われ、その後各種審査の上、採択が決定される(【発表リリース】)。



「買い物弱者」とは発表リリースの定義によれば、

流通機能や交通網の弱体化とともに、食料品等の日常の買い物が困難な状況に置かれている人々のこと。徐々にその増加の兆候は高齢者が多く暮らす過疎地や高度成長期に建てられた大規模団地などで見られ始める。経済産業省では、その数を600万人程度と推計。

とのこと。この「流通機能や交通網の弱体化」とは少子高齢化や過疎化などの社会情勢の変化に伴うもの(【「お年寄りがいる家」のうち1/4・414万世帯は「一人きり」】)。また【歩きは1キロ、自転車は3キロ……普段の生活で行ける距離】【夫婦とも65歳以上のお年寄り世帯で「1キロ以内にお医者さんがいない」のは24.4%】にもあるように、高齢者世帯(一人暮らし含む)には居住地の周囲1キロ以内に生活インフラが存在することが求められているが、環境の整備はなかなか難しい。移動巡回タイプのインフラを提供する手もあるが、自治体だけの手には負えない状態にある。

そこで経済産業省では民間の手を借りるべく、宅配や移動販売、地域のコミュニティ活動との連携などを行う事業に対し今件補助制度を設け、事業者の参入・増加の後押しをすることになった。

具体的には

事業例1:商店の無くなった周辺集落で行うミニスーパー事業
事業例2:スーパーと商店街が共同で取り組む共同宅配事業
事業例3:NPO 等が御用聞きを行い、スーパーの商品を配達する事業
事業例4:農業者等が小売事業者と協力して取り組む移動販売車事業
事業例5:スーパーが自治体と協力して運行する買い物支援バス事業

などが例として挙げられている(無論これらそのもの、あるいは類似事業には限定されない。「補助事業を実施した結果、支援対象の買物困難地域・買い物弱者の販売額又は利用の効果が認められる」ものであることが必須条件)。

公募に参加して採択された事業には、補助事業の終了後に補助金(補助率2/3、補助額上限1億円、下限100万円)の交付が行われることになる。



【一人暮らしの買物生活はどのような変化をしてきたか…過去15年間の買物先の移り変わりをグラフ化してみる】【一人暮らしの食生活、どこを頼りにしてきたか…過去15年間の食料の買い入れ先の移り変わりをグラフ化してみる】の60歳以上のデータを見てもらえばお分かりの通り、経年と共に一般小売店の利用率は減少し、スーパーやコンビニが増加する傾向にある。これらの業種は総合小売店的な意味合いが強く、便利なものであるからに他ならない。

買い物新たに事業を一から創るのも一つの手だが、このような状況を鑑みた上で、昔の総合雑貨屋に相当するコンビニの誘致を資金面などで推し進めたり(規模は病院や学校などにあるミニコンビニ程度で構わない。防犯のために駐在所や郵便局に併設するという手もある)、百貨店不況の中で好業績を挙げているダイシン百貨店のような(【6年連続経常利益をはじき出す「ダイシン百貨店」のレポートから、デパート不況打開の糸口を考えてみる】)スタイルの店舗展開を百貨店側にアプローチしてみたり、現在スーパーが積極的にサービスを展開している「お買いもの品の宅配サービス」に補助金を出して手数料を極力下げて利用しやすいようにしたり、それこそ自宅からでも買い物ができるインターネット通販を「買い物弱者」が積極的に利用できるような仕組みを創生するなど、これまでに個々の事業者が行ってきた「創意工夫」にちょっとずつ手を差し伸べるだけでも、状況は十分以上に改善すると思われる。

下手な資金援助と新事業の掘り起こしは、それこそ「税金の無駄遣い」「効果が薄いばらまき」になり市場を混乱させるだけでなく、補助事業が終わった後に、さらなる荒廃を招きかねない。さまざまな視点から、状況の改善を模索してほしいところではある。



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