日本小児科医会、子供の心のケアのための小冊子をPDFで無料配布中
2011/03/30 06:45
先に【関東の医師の半数「震災の心理的影響で病状が悪化した大人の患者がいる」】や【患者が強い不安を訴え薬を処方した医師は1/3、不安要因は「余震」「報道」】でも示したように、東日本大地震(東北地方太平洋沖地震)とその後の震災に伴い、子供が心理的な不安定を覚える事例が生じている。周辺環境に対する感性豊かな時期だけに、直接自らが体感する余震はもちろんだが、テレビなどで得た情報を自ら体感している、すぐ間近な事例であると錯覚し、不安やストレスを覚えてしまう(PTSDと診断されるような症状になることも少なくない)。日本小児科医会では2007年4月の時点でこのような事例・状況が発生した時にそなえ、子供が直接自然災害や人的災害に巻きこまれたときはもちろん、報道などで容易にそれらの状況を知り得る環境において、大人に求められる「子供の心のケア」の手法や注意事項をまとめた【もしものときに…子どもの心のケアのために(PDF)】を無料配布している。
↑ 「もしものときに…子どもの心のケアのために」表紙
「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」とは、危うく死亡・重症に至るような出来事を経験した後に、不安・不眠やパニックなどの症状が、一か月以上継続する、精神的な病気。症状が1か月未満の場合は、PTSDではなく、ASD(急性ストレス障害)に分類される。本来は自らが経験した場合に生じ得ることが多い症状だったが、情報伝達技術の発展と反復取得により、自らが体感しているような錯覚に(自覚・無自覚に関わらず)陥り、病状を発しやすい状況にある。
特に子供は発達途上にある子供は、取得した情報を大人のように十分理解することなく記憶してしまうこと(例えばテレビの報道を自分自身、自分のすぐそばで起きているものと錯覚する)や、自分の気持ちや見聞きした出来事を上手く表現できないために、心の内に貯め込んでしまうことから、心の傷を負ってしまいやすくなる。
同冊子は奥付・表紙・前書きも合わせて16ページ構成。大まかに「子どもたちのサインと大人にできる支援」「大人のセルフケア-大人も動揺する-」「もしものときは…」の三つに大別。特に最初の項目では「幼児期」「小学生」「中・高校生」と子供の年齢別に三階層に区分し、どのような反応を「心のシグナル」として子供が発しているのかに関するチェックリスト、どのようなことを大人が手掛けて支えて行かねばならないのかについて箇条書きで、分かりやすく伝えている。
↑ 大人ができることを簡単に、箇条書きにまとめている
今冊子は基本的に「子供を持つ親」に向けたものだが、後半部分は大人自身に向けたもの、具体的には「大人の『心のセルフケア』の方法」「PTSDのチェックリスト」「心理的観点における『もしも』の時の心構え、対応法」が語られている。この部分はすべての大人が読むに値する内容を持っている。
「自分には関係ない」と思っていても、案外心が疲れていることはよくある話。一通り目を通すことをお勧めしたい。
スポンサードリンク