【更新】丸善石油化学、新聞用インキ原材料DIB(ジイソブチレン)の生産工場復旧に「最低でも1年間は必要」
2011/04/06 06:54


↑ 隣接するコスモ石油の千葉製油所の様子。【直接リンクはこちら】
丸善石油化学は石油化学製品の開発・製造・販売を行う化学メーカー。メインとなる千葉工場が、隣接するコスモ石油の千葉製油所内で発生した火災などで延焼。鎮火後、装置の健全性の確認やその他の準備が終了した一部装置はすでに再稼働を始めているが、アルコールケトン製造装置からは火災が発生したことから損害も大きく([リリース])、今回の発表にもある通り、復旧・生産再開には最低でも1年間は必要との見通しとなった。そのため該当装置で生成する製品チルエチルケトン(MEK)、セカンダリーブチルアルコール(SBA)、ジイソブチレン(DIB)の出荷が停止されることになる。
特に新聞向けなどのインキ原料の一つである樹脂作りには欠かせないジイソブチレン(DIB)は、国内では丸善石油化学が唯一の生産元だけに、状況は深刻。化学工業製品の業界紙【化学工業日報】では、「各社は代替原料ソースの確保や海外からの調達に加え、場合によっては他原料へのシフトも視野に入れるなど事態打開に全力を挙げており」と説明。影響を受ける各工程の企業が代替案の模索にフル回転し、当面の製品供給不足は回避されるとの見通しを伝えている。
すでに影響を実体験している人も多いと思われるが、少なからぬ雑誌や新聞などでインキ・紙の供給不足に合わせ、カラー印刷部分が減らされたり、ページ数の削減などの措置がとらている。丸善石油化学によるジイソブチレン(DIB)はインキについてだが、製紙でも同様の原材料不足が懸念されている。例えばパルプの製造や古紙の漂泊に必要な過酸化水素の不足がその一例。これについては【三菱ガス化学が過酸化水素を緊急輸入へ】にもあるように緊急輸入で対応することで対応するとのことだが、計画停電による生産力の減退を考慮すると、中期的かつ慢性的な供給不足は否めない。
ただでさえデジタルメディアの台頭で大規模な戦略転換を求められていた紙媒体の業界にとっては、「兵糧攻め」に等しい今件状況。購読ハードルが極めて低い紙媒体が無くなることはあり得ないが、一連の状況がデジタル化や、資源の無駄の削減(例えば不必要な「押し紙」)を推し進めることは容易に想像できよう。
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