ツムラ、漢方薬の原料生薬「甘草」の大規模栽培に成功

2011/04/19 06:46


甘草漢方薬で日本国内最大手の【ツムラ(4540)】は2011年4月18日、中国医薬保健品股分有限公司(”分”は「にんべん」付き、「中国医保公司」と略)、北京中医薬大学との共同研究により、漢方薬の原料生薬である「甘草(カンゾウ)」の栽培技術を確立し、中国において特許権の登録手続きを完了したと発表した。甘草は、医薬品、食品、化粧品などの原料として使用される重要な生薬で、同時にこれまでは野生の品に依存していた(【発表リリース】)。



↑ 甘草栽培圃場
↑ 甘草栽培圃場

↑ 栽培甘草
↑ 栽培甘草

甘草は、医薬品、食品、化粧品などの原料として使用され、日本では漢方薬の処方として厚生労働省が指定した処方中約7割に配合されている、もっとも重要で使用頻度の高い生薬。一方で中国北部の乾燥地帯に自生している野生品に依存しているのが現状であり、甘草の需要増加に伴い、乱獲による砂漠化や資源量の枯渇が心配されていた。

ツムラでは2001年から中国において甘草の栽培化に関する共同研究を実施。甘草の栽培そのものの難易度はそれほど高いものではないが、医療用漢方製剤の原料として考えた場合、日本薬局方の規格に適合することが必須条件であり、その中でも主成分であるグリチルリチン酸含量2.5%以上の条件を満足させることが、これまでは大変難しい課題だった。

今件について10年間にわたる共同研究の中で、さまざまな栽培条件を設定し、規格を満たすべく取り組んだ結果、中国西北部の圃場において、1年3か月の生育期間でグリチルリチン酸含量が平均3.5%を超える甘草を栽培することに成功。また、野生甘草と栽培品の成分組成が同等であることも確認された。

この栽培方法についてツムラでは、中国特許庁から特許権を付与する旨の通知書を受領し、登録手続きを完了。中国における甘草栽培拡大のため、特許権の実施許諾要請があった場合、共同出願人である中国医保公司、北京中医薬大学と話し合いの上、無償で許諾する方針とのこと。さらに栽培研究の中では、大規模栽培を想定した機械化の検討もあわせて行い、今後の栽培に取入れる目処をつけることができたと説明している。

野生の甘草の乱獲による砂漠化については[1年前の読売新聞]に状況を説明する記事があるが、それによると北京大薬学院の蔡少青教授(生薬学)の話として「甘草1キロを採ると、広さ数十平方メートルの植生が壊れてしまう。砂を固める作用があるので、乱獲は草原の砂漠化を招く」という言葉がある。今回開発された栽培方法が甘草の安定的な供給の確保と共に、野生品の保全や環境対策にも寄与することを願いたいものだ。



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