「500万kWhを産業界のために」東洋大学、夏休みを延長して8月-9月の授業・試験を無くし節電に協力
2011/04/26 12:20


↑ 東洋大学
【東電、計画停電は6月3日まで「原則不実施」】や【東京電力管轄内の最大電力需要の推移をグラフ化してみる(追補版)】にもあるように、東日本大地震で電力供給源が大きな影響を受けたことで、東京電力管轄内では一年内でもっとも電力需要が高まる7月-9月において、電力需要が供給を上回る可能性が生じている。このような事態が起きると、不特定の個所で突然の停電が発生するため、大きな混乱が生じてしまう。それを避けるため、各所で大規模な節電対策や、緊急措置的な電力供給のかさ上げが行われている。

↑ 東京電力の月単位最大電力需要(万kW、最大需要時)(2007年-)(再録)
今回東洋大学で発表されたのは、そのような電力供給不足の状況に応じるもの。大学の授業運営の上で夏場の電力消費を抑制するため、「授業および学修時間の確保」という大学の存在意義を維持しつつ、「広く国民生活および産業界への電力供給に協力することによって、社会貢献の一翼を担」うため、次の施策を実施することになった。
1)春学期授業期間を2週間程度短縮し、7月末までには終了する。
2)秋学期授業期間を1週間延期(かつ短縮)して、10月より開始する。
2)秋学期授業期間を1週間延期(かつ短縮)して、10月より開始する。
この措置により、8月と9月は原則として授業や試験は実施されず、電力使用量を最大限に抑制できる(授業期間短縮の影響が直接かかるであろう7月と10月は「密度の濃い授業を行」うとしている)。この行動で同大学側では500万kWhの節電が可能としており、これについて「産業界で活用していただきたい」と述べている。
さらに夏季休暇が延長されることで「東日本大震災に対する学生のボランティア活動および教職員の復興問題対策チームの活動も、夏期休暇期間を延長することでより行いやすくなるものと期待しています。大学としても学生のボランティア活動を強く支援していく所存です」とし、学生や教員一人ひとりの社会貢献を間接、直接にサポートしていくと説明している。
大学側では今回の措置について学生に向けた説明の中で、
ドラッカーが唱えた『ネクスト・ソサエティ』の副題として、“歴史が見たことがない未来がはじまる”“急激な変化と乱気流の時代には、たんなる対応のうまさでは成功は望みえない” また、“知識労働者とは新種の資本家である”とも言っている。大学とは正に新種の資本家群である。
この様な危機の時に、東洋大学が持ち得る哲学は、今立ちはだかっている壁を乗り越え更に強くなるよう、産業界に積極的に協力することである。これこそが産学連携と言えるのではないか。
この様な危機の時に、東洋大学が持ち得る哲学は、今立ちはだかっている壁を乗り越え更に強くなるよう、産業界に積極的に協力することである。これこそが産学連携と言えるのではないか。
と説明。今般東日本大地震やそれに関わる震災・災害を「危機」としてとらえ、「産業界に積極的に協力すること」の体現化であり「社会の一員である大学が取るべき社会的責任である」とコメントしている。
夏の電力供給不足は特にピーク時(10時-21時)の電力供給が問題になる。したがって電力「量」全体の不足とはやや意を別にする。とはいえ大学の授業時間をはじめとした電力使用時間の大半は、電力ピーク時と重なるため、夏期休暇延長による節電施策は、むしろ有益な話といえる。
大学側の試算の具体的方法が明記されていないので概算になるが、500万kWhを単純に2か月分で割ると8.06万kW日、(単純に24時間で割って)0.34万kWとなる。電力需要の押し下げという点ではほんのわずかかもしれない。しかし所属学生や教員らの支援活動が活性化すること、そして社会的責任の具象化による周囲に与える影響なども合わせて考えれば、大いに意義のあることといえよう。
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