任天堂、携帯ゲーム機「3DS」を2万5000円から1万5000円に値下げ・先行購入者には特典で対応

2011/07/29 06:45


ニンテンドー3DS[任天堂(7974)]は2011年7月28日、【任天堂の携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」発売日は2011年2月26日、価格2万5000円に決定】でもお伝えしたように同年2月26日に発売された携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」について、同年8月11日からメーカー希望小売価格を従来の2万5000円から1万5000円(いずれも税込)に値下げすると発表した。4割の値下げとなる。これに合わせすでに購入した人に対しては「ニンテンドー3DS アンバサダー・プログラム」と称する特典プログラムを提供することも明らかにしている(【値下げ発表リリース】【先行購入者に対する「ニンテンドー3DS アンバサダー・プログラム」の説明】)。なお海外でも値下げの幅・時期が異なるものの、2011年7月-9月中に値下げを実施するとのこと。



↑ 3DSアクアブルー
↑ 3DSアクアブルー

「ニンテンドー3DS」は「ニンテンドーDS」シリーズの後継機として、既存のニンテンドーDSシリーズのソフトもプレイできる互換機能を有し、ニンテンドー3DS用に開発されたゲームソフト、その他3Dコンテンツが”特殊な眼鏡の必要なく”楽しめるだけでなく、本体を使い3D写真の撮影閲覧、さらには「いつの間に通信」など、多種多様な新しい機能を盛り込んでいる、任天堂の最新携帯ゲーム機。

今回の発表によれば、発売から半年足らずで額面にして1万円、割合で4割もの値下げを行うことになる。ゲーム機の価格値下げのペースと値下げ率としては異例の部類。類似の事例としてはソニーのプレイステーション(初代)は(据え置き型ではあるが)初代型番のSCPH-1000が1994年12月3日に発売された際は3万9800円、翌年7月21日に発売されたSCPH-3000は2万9800円に値下げされているが、内部仕様が一部変更されており(S端子の削除など)、同一商品の値下げではない。

今件のイレギュラー的な値下げについては任天堂側も「苦渋の決断」だったことを、先行購入者に対する「ニンテンドー3DS アンバサダー・プログラム」内で同社の岩田聡社長の言葉として伝えている。曰く、

ゲーム機を発売して一定の期間が経ち、さらなる普及を目指して値下げをするということは過去にもありましたが、今回のように、発売から半年も経過せずに、しかもこれほど大幅な値下げをしたことは、任天堂の過去の歴史にはありませんでした。

このことは、いちばん最初にニンテンドー3DSを応援してくださったみなさまからのご信頼を損ない、ご批判を受けかねないことだと痛感しております。

今回、このような前例のないタイミングで値下げに踏み切ったのは、ニンテンドー3DSの発売前と、現時点で大きく状況が変わり、今思い切った手を打たなければ、多くのお客様にニンテンドー3DSを楽しんでいただく未来がつくりだせない可能性が高まったと判断したためです。

ソフトの作り手の方々にも、販売に携わるみなさまにも、「ニンテンドー3DSは、ニンテンドーDSの後継のゲーム機として間違いなく普及する」という確信を持っていただけなければ、ニンテンドー3DSが勢いよく多くのお客様に広がり、ソフトが充実し、結果的にニンテンドー3DSを購入されたみなさま全員にご満足いただくという循環がつくれません。

みなさまは、ニンテンドー3DSを最初に応援してくださった大切なお客様です。「早く買って損をした」というお気持ちを完全になくすことはできないかもしれませんが、特別なお客様であるみなさまに対し感謝の意を表して、以下のようなご提案を用意させていただきました。

とあり、今回の値下げが任天堂において前例の無い動きであるのを認めると共に、「ニンテンドー3DS」が含まれるエンタテインメント領域で大きな変化が起きていることを示している。簡単にまとめると「(経済動向の変化やスマートフォンなどの領域的に近いハードの普及で)3DSの市場形成が満足な規模に至っておらず、このままではソフトメーカーも販売側も参入・展開に二の足を踏んでしまいかねない。発売しても十分な利益を確保できず、続編や新展開の試みも難しくなる」「だから値下げをしてハードの普及数を底上げし、市場形成を促進する」となる。

実際、同日発表された同社2012年3月期・第1四半期の決算短信(【該当リリース、PDF】)などによれば、ニンテンドー3DS本体の売れ行きは

↑ ニンテンドー3DS本体販売動向(万本)
↑ ニンテンドー3DS本体販売動向(万本)

●(参考)2010年4月-2011年3月
・国内……106万台
・アメリカ……132万台
・その他……123万台
・計……361万台

●2011年4月-6月
・国内……21万台
・アメリカ……11万台
・その他……40万台
・計……71万台

●累計(発売後)
・国内……127万台
・アメリカ……143万台
・その他……163万台
・計……432万台

●目標(会計年度予想)
・2012年3月末まで……全世界で1600万台

であり、発売直後のスタートダッシュから早くも失速状態にあることが分かる。また、今期の販売目標の1600万台(【任天堂がWii後継機を12年発売へ、今期3DS計画は1600万台(ロイター)】)に対し、1/4の期間が過ぎた時点で進捗率は4.4%でしかなく、達成が極めて難しい状況にあるのが分かる。このような状況だからこそ、ほぼ半年で4割値下げという、任天堂では前例の無い施策を打ち出さねばならなくなったのも理解できよう。

他方、同日先行購入者(つまり2万5000円で購入した人)に対し、「ニンテンドー3DS アンバサダー・プログラム」という形で、各種バーチャルコンソールタイトル(年末までに計20タイトル)の無償配信が行われる。これらは後日有料配信されるタイトルの先行配信版で、一部機能が対応していないが、後ほど完全機能版として有料版が配信された際には、「無料で」「機能更新」が可能となる。なおこのプログラムに参加するには、事前に3DS本体を購入し、その上で「2011年8月10日23時59分までにニンテンドー3DSをインターネットに接続し、『ニンテンドーeショップ』に一度でもアクセスしておく」必要がある(2万5000円時に購入しても、アクセスしていないと「ニンテンドー3DS アンバサダー・プログラム」には参加できない)。



携帯ゲーム機の高性能化とインターネットへの接続機能の充実と並行する形で、携帯電話・スマートフォンの高性能化や普及率の向上(特にスマートフォン)が図られている。そして携帯電話やスマートフォン上でネットワーク機能を駆使したソーシャルゲームが大いに支持される状況を見ると、ニンテンドー3DSの不振は、ほぼ近い顧客層を持つスマートフォンの伸びが多分に影響していると判断せざるを得ない(特に米大陸の動向を見ると、それが如実に分かる)。

他にも「ハード購入を決断させるだけのソフトの不足」「経済動向の変化で2万5000円を『携帯ゲーム機』だけの対価として支払うハードルが相対的に高くなった」など、今件の選択をせざるをえなくなった状況変化の事由にはさまざまなものが考えられる。実際上記2012年3月期・第1四半期の決算短信内でもソフトの不作ぶりが何度となく語られており、本体の普及数不足と参入企業の足踏み、秀作タイトルの不作がスパイラル的な状況で起きているのが分かる。

今回の値下げがどれほどのインパクトをニンテンドー3DSの市場にもたらすかは、現時点では未知数。「本体価格が高いので購入を踏みとどまっていた」層には朗報といえるが、それによって底上げされる台数で「参入企業の増加=秀作タイトルの輩出可能性増大」「スマートフォンなどへの対抗力増強」まで手が届くかは、予想が極めて困難。今回の決断の成果がどれほどのものになるかは、今後の動向を注意深く見守っていきながら、逐次推し量るしかないだろう。



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