NEDO、再生エネルギーへの利用を視野に入れた大規模蓄電システム開発のプロジェクトを開始

2011/08/10 06:38


乾電池NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は2011年8月9日、2011年度新規プロジェクト「安全・低コスト大規模蓄電システム技術開発」の助成先、委託先として8法人(6件)を採択したと発表した。各法人には再生可能エネルギーの大量導入時に電力系統に生ずる影響を対策するための徹底した低コスト化、長寿命化、安全性を追求した蓄電システムの開発と、大規模な定置用蓄電池に必要な劣化診断システムの研究開発に勤しんでもらうことになる(【発表リリース】)。



今件は太陽光発電、風力発電など再生可能エネルギー(自然エネルギー、新エネルギー)の大量導入によって生ずる影響への対策として有望視されている「蓄電システム」について、開発に取り組むというもの。多用途展開や海外展開も見据えて徹底した低コスト化、長寿命化、安全性を追求した蓄電デバイス及び蓄電システムの開発により、国際競争力の向上を図ることを念頭に、系統安定化用蓄電システムの開発を実施して、日本の再生可能エネルギーの利用拡大に貢献することを目的とする。

具体的には、「余剰電力貯蔵」と「短周期の周波数変動に対する調整」を対象に、送電系統に接続する効率80%以上、蓄電規模数十MWh-数GWhを想定した蓄電システムの開発に取り組むこととなる。また、系統安定化用蓄電システムが将来円滑に普及するために必要な取り組みを、共通基盤研究として実施する。

助成先、及び研究開発テーマは次の通り。

(1)系統安定化用蓄電システムの開発テーマ(助成先)
・短周期周波数変動補償のためのネットワーク型フライホイール蓄電システムの開発
(サンケン電気株式会社) 今年度助成額99百万円
【内容】 量産可能な多数の小規模フライホイールを使用し、それらを高速ネットワーク技術で結んで大規模蓄電システム構築する。

・大規模蓄電システムを想定したMn系リチウムイオン電池の安全・長寿命化基盤技術開発
(日本電気株式会社、NECエナジーデバイス株式会社)今年度助成額176百万円
【内容】 ポリマーゲル電解質を用いた長寿命で安全性の高いリチウムイオン電池の開発を実施する。

・安全・低コスト大規模ハイブリッド型蓄電システム技術開発
(株式会社日立製作所、新神戸電機株式会社)今年度助成額106百万円
【内容】 長寿命型鉛電池の開発と、キャパシタとを組み合わせたハイブリッド型蓄電システムを開発する。

・低コスト・高性能リチウム二次電池を用いた大規模蓄電システムの研究開発
(三菱重工業株式会社)今年度助成額234百万円
【内容】 低コスト高性能なリチウムイオン電池の開発と、それを用いたコンテナタイプのMW級蓄電システムの開発を実施する。

(2)共通基盤研究(委託先)
・過渡現象を利用する大規模蓄電システムの非破壊劣化診断技術の開発
(学校法人 同志社) 今年度委託額32百万円(予定)

・系統安定化用蓄電システムの劣化診断基盤技術の開発
(学校法人 早稲田大学) 今年度委託額75百万円(予定)

多種多様な再生可能エネルギーのうち、太陽光(太陽熱)及び風力は、その出力の不安定さや周波数の変動から、(出力そのものの低さの他に)常用・安定的の観点の上で、インフラのメインとして用いるのには問題視されるところが大きい。生成した電力を一度貯めておき安定化した上で使用出来れば良いのだが、現行技術では大量の電力を効率よく蓄積しておくのは困難。今回の研究委託は、この問題を少しでも解消し、より安く、より高性能で、より安全性の高い「蓄電池」(イメージ的には巨大な乾電池)への開発を促すのが目的。

太陽光発電蓄電池の技術促進は再生可能エネルギーの可能性を底上げするのはもちろんだが、その他にもさまざまな応用(技術内容次第では電気自動車の航続距離の延長や、家庭向け充電池への応用可能性も見えてくる)が期待できる。再生可能エネルギーを推進するのであれば、闇雲に「すでに失敗例が複数存在する」過去の他国の事例に沿ったシステムを無理に導入して国費の無駄遣いをするのではなく、今件のような蓄電池の技術革新を目指す行動や、各種エネルギーの技術向上(例えば太陽光発電のエネルギー転換効率を高める、安価で量産が容易な素材での生産が可能なユニットの開発)に重点を置くのが、健全かつ正しい施政といえる。

重要性を考えれば、本来なら予算枠を今件の10倍にしても足りない位ではあるが、「現状」では止む無しかもしれない。まずは「初めの一歩」として、委託を受けた各社においては努力まい進を続け、期待に応えて欲しいものだ。



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