ファミリーマートで移動販売車両「ファミマ号」導入、被災地で営業開始
2011/09/09 06:48
[ファミリーマート(8028)]は2011年9月8日、常温・定温(16-20度)・冷蔵(3-8度)・冷凍(マイナス24度以下)の4温度帯の販売設備を搭載した移動コンビニ「ファミマ号」の稼働を発表した。4温度帯の販売設備を備えた移動販売車の導入は、同社としては初めての取り組みになる(【発表リリース】)。
↑ 移動コンビニ「ファミマ」号の外観・営業時
↑ 「ファミマ」号の店内
↑ 今件を伝える報道公式動画。【直接リンクはこちら】
元々各大手コンビニでは一部において、採算確保が難しい地域でサービス提供を行う目的などで、トラック・バンなどを活用した移動型の店舗を保有していた。そして昨今の東日本大地震・震災による被災地域への対応をはじめとした「災害時における敏速なサービス提供」の手段と、過疎化が進む地域社会における「買い物弱者(困難者)対策」手段として、移動型店舗の重要性・需要が再確認されることとなった。
今回ファミリーマートが展開する「ファミマ号」はリリースの題名にもある通り、「被災者支援」と「買い物不便地域(の支援)」の双方を目的としたもの。販売設備として揃えた4温度帯は、それぞれ「常温(加工食品、菓子、日用品など)」「定温(おむすび、寿司、弁当)」「冷蔵(サラダ、スパゲティ、日配食品など)」「冷凍(アイス、冷凍食品など)」と、通常店舗のコンビニで販売している各種食品に対応している。これらがすべて備えられることにより、店舗型コンビニで販売している食品のほぼすべてを取り扱える。「ファミマ号」内の品揃えは、この4温度帯設備を活用する形で、おむすび、弁当、飲料、菓子、日用品などおよそ300種類に達しているとのこと。また地域の需要にあわせる形で、随時内容は変更していく。
「ファミマ号」では飲料用のホットウォーマー、専用の発電機を搭載しており、停電地域でも営業が可能。電子レンジ・電子ポット・手洗い場も用意。リフトアップ式の開閉扉を採用し、その扉を屋根として活用することもできるようになっている。さらにリリースに記載は無いが[一部報道]によると40リットルの給水設備も備えており、小型の移動総合生活支援拠点的な役割を果たすことになる。
↑ 「ファミマ」号の各種什器配置図
「ファミマ号」第一号は宮城県仙台市の避難所などで、2011年9月中旬から営業を開始。その後岩手県、福島県、宮城県を中心に同年10月末までに合計3台の「ファミマ号」を稼働する。今回稼働が発表された3台はam/pmで使われていた3t配送車を改造したものだが、今後は需要に合わせた車両も開発、(これも一部報道によるが)2012年度中には100台まで稼働台数を増加させるとのこと。そしてそれに合わせ、被災地を含む各地の買い物不便地域をカバーすることを目指す。
震災直後は緊急事態ということもあり、付け焼き刃的なところも多かった移動販売車両だが、今回発表されたファミリーマートのものは、震災による被災地への支援も含めた「買い物が不便な地域」のカバーという目的のもと、常設的な「システム」の稼働となる。(事前の行政からの販売許可が必要になるものの)機動力の高さ、言い換えれば柔軟性を持つ「販売機動部隊」の常設という観点では非常に興味深く、注目すべき動きといえる。
一方で移動販売車の運用上の問題(降雨など販売時に生じるアクシデントへの対応)や、高齢者への対策(すでに昇降ステップに手すりを取り付けてあるが、将来的にはさらなる改善が求められよう)、コンビニで買い物をする際に必要となるお金へのサポート(具体的にはATM。これについては別会社だがセブン銀行が【セブン銀行、被災地支援として移動型ATMサービスの運用開始】などの動きを見せている)、そして移動販売車のスタッフや販売物品の配置入れ替えなど「商品流通」上の仕組みの構築など、課題は決して少なくない。
今回の震災で「非常時のコンビニの展開」が有益なことが証明され、また今後「買い物弱者」が増加していくのは間違いなく、移動販売車の需要も確実に増加する。今後試行錯誤を繰り返す形で改善を続けながら、このタイプの新サービスはファミリーマートだけでなく、他のコンビニなどでも行われることになると容易に想像できよう。
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