被災地での震災悪質商法、不動産周りが多数を占める
2011/10/01 07:01
国民生活センターは2011年9月30日、東日本大地震・震災による被害で消費生活相談を実施できない地域(岩手県、宮城県、福島県。4月11日からは茨城県も追加)を対象に、同年3月27日から7月29日まで開設した「震災に関連する悪質商法110番」の傾向などを発表した。相談件数は徐々に減少する傾向にあったことや、内容は不動産関連がもっとも多く、時間の経過と共に放射線測定器などの相談が寄せられるようになったなどの傾向が見受けられる(【発表リリース】)。
↑ 30日ごとに見た相談件数(件)
「震災に関連する悪質商法110番」の開設期間中に対象地域から寄せられた相談件数は919件。最初の一か月は平均で14件/日の相談が寄せられている。内容としては屋根や壁など住宅の修繕工事などの「工事・建築」が最も多く、賃貸アパートや借家などの「不動産貸借」と、住宅・不動産周りの相談が続いている。以下、墓、車、給湯システムなどの「修理サービス」に関する相談、公的な支援制度や罹災(りさい)証明についての問い合わせなど、被災地特有の事情に関連するものが多く寄せられた。
さらに開設後2か月目以降は「放射線測定器などの相談」や、「出会い系サイト」などが寄せられるようになった。後者は通常時にもよく寄せられる内容だが、前者「放射線測定器などの相談」は今件震災特有のもので、その少なからず案件において、加害(未遂)者側が時節に応じて人々の不安心理や窮状を巧みに悪用しようとする姿勢が見て取れる。
震災に関連する主な相談内容は次の通り。
↑ 30日毎の上位・注視商品別件数動向(件)
●工事・建築
「当初の見積もりよりも高額な代金を請求された」など工事の料金に関する相談、「補修工事を契約した業者が、約束通り工事を履行しない。解約はできるか」など工事の遅延に関する相談など。
中には、損害状況について不安をあおられたり、契約をせかされたりして、十分な説明を受けない状態で契約に至った、という相談も。また、契約書面が渡されない、渡されても見積書のみの場合や、施工の明細が分からないもの、契約、施工後に渡されるケースも確認されている。
●不動産貸借
「不動産貸借」に関しては、地震による建物の被害について「家主に修繕を求めたがなかなか対応してもらえない」というものや、逆に「家主に修繕を求められた」などの原状回復に関する相談、退去に伴う敷金や家賃の清算に関する相談が開設期間全体を通してみられた。また、4月ごろからは被災した住居から引っ越した相談者から、転居先の物件の契約条件などに関する相談が寄せられている。
●修理サービス
開設当初は「修理に出していた車が流された」など自動車の修理サービスに関する相談が多かったが、開設期間全般では「墓の修理を依頼したら高額な料金を請求された」「訪問してきた業者に強引に屋根の修理を勧誘された」などの墓や住宅の修理サービスが目立った。
●生活支援
「震災で支出が重なった。生活支援策について教えてほしい」「実家の空き家が被害を受けたが、支援金が支払われない」など、生活支援や情報を求める相談は、開設期間全体を通してみられた。
●デジタルコンテンツ
少数ではあるが「避難所生活のストレスから話し相手を求めて出会い系サイトにアクセスした」、「震災後に金銭的に苦しくなって「メールで稼げる」という出会い系サイトに登録した」など震災後の被災者の生活環境の変化が被害に結びついた例も。
また、阪神淡路大震災の際に開設された「震災関連消費生活ダイヤル」と比較すると、デジタル系サービスの悪用(出会い系サイトにおける被災者の心理不安を煽った上での便乗勧誘、インターネット通販の悪用)などが増加・新規確認されている点が異なる。
【2011年8月の新設住宅戸数、前年同月比14.0%増】でも触れているが、悪用という点での「気を見るに敏」な業者・団体による、被災者の心理的・環境的な不安をついた案件が少なくない。国民生活センターに寄せられた相談内容が、事象の全部ではないことを考えれば、該当する人達の心情は察するに余りある。
一人ひとり個人が(流言などに対し)気をつけるのは当然として、付け入れられるリスクを持つ人(特に高齢者)が周囲に居る人達はその人に声をかけるなどをし、少しでも被害が少なくなるよう心がけてほしいものだ。
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