大手民鉄16社の鉄道係員への暴力行為、2011年度は229件・泥酔者による事案は3/4に

2012/05/28 06:45


駅構内日本民営鉄道協会は2012年5月24日、2011年度(2011年4月-2012年3月)に発生した、大手民鉄16社(東武、西武、京成、京王、小田急、東急、京急、東京メトロ、相鉄、名鉄、近鉄、南海、京阪、阪急、阪神、西鉄。JR各社は含まれていない)における駅員や乗務員など鉄道係員に対する暴力行為の件数に関する集計結果を発表した。それによると2011年度の該当件数は229件に達し、2008年度以降続いている200件超えという高い水準を維持してしまったことが分かった。行為発生の契機別では「理由なく突然に」がもっとも多く、「酩酊者に近づいて」「迷惑行為の注意」が続いている(【発表リリース】)。



2011年度における大手民鉄16社内の、鉄道係員に対する(利用客による)暴力行為件数は229件。昨年度の219件より10件増加し、2000年度以降では最高値を示した2008年度の236件に迫る勢いを見せている。

↑ 私鉄大手16社における、鉄道係員に対する暴力行為件数推移
↑ 私鉄大手16社における、鉄道係員に対する暴力行為件数推移

2007年度から2008年度にかけての大幅な増加傾向だけを見れば「不景気と行為件数の増加の連動性」も推測できるが、2001年度以降のIT不況時とは完全には連動しておらず、その推論は成り立ちにくい。むしろ数年の横ばい・急上昇を繰り返しながら、中期的には増加の傾向にあると見た方がよく、憂うべき事態なことが分かる。

続いて曜日別・発生時間帯別の区分。

↑ 曜日別発生件数
↑ 曜日別発生件数

↑ 時間帯別発生件数
↑ 時間帯別発生件数

曜日別はややばらつきがあり傾向を見出しにくいが、敢えて言えば週末-休みの曜日にかけて多めの動きが見える。そして時間別では圧倒的に深夜時間帯が多く、日中の3倍程度に及んでいる。これは後述するように、発生事由の多くが「酩酊した客に近づいた」「理由なく突然に行われる」など、多分に深夜にて発生する起因によるところが大きい。

2010年度はやや昼間に多めの値が確認できるが、直近の2011年度は該当件数のほぼ半数が深夜時間帯に起きていることから、同時間帯の異様さが理解できる。また金曜日-日曜日にやや大きめの値が出ているのも、これらの事由によるものと思われる。

該当事象の発生事由については、2011年度も合わせ4年分をさかのぼれたのでそれをまとめて、発生件数については最新リリースと同じ区分分け(10代を独自換算)が行われた3年度分に、10代と20代を合わせた「20代以下」として集計されている2008年分を無理やりつなげてまとめたのが次のグラフ。

↑ 主な契機別発生件数
↑ 主な契機別発生件数

↑ 加害者年齢別発生件数(各年全体比)
↑ 加害者年齢別発生件数(各年全体比)

発生事由では「酩酊者」「理由なく突然」がこの数年再び増加の動きを見せていること、世代別では若年層が減り、中堅層が増加していることに加え、「不明」つまり加害者を補足できず、逃げてしまったと思われる事例が増加しているのが気になるところ。

しかもこの事由は「主な」項目であり、実態は複数項目にまたがることが多い。リリースに掲載されている具体的事例を見ても、「理由なく突然に」の多くに「飲酒:あり」と記載されており、酒の勢いで理性がマヒし、衝動的に行為に及んでいることが分かる。実際、2011年度における加害者側の75%は「飲酒あり」の状態なことが把握できる。

「理由なく突然に」「飲酒あり」双方に該当する事例を挙げても、理不尽な状態なものが多い。

・特急券を見せずに乗車しようとしたお客さまに、特急券の提示を求めたところ、突然、左顎を殴打された。そのため降車を求めると、更に左足付け根部分を蹴られ負傷した。(全治5日)

・自動改札の使い方がわからず困っているように見えたので、お客さまのそばに行き、声をかけたところ、突然殴られて負傷した。

・お客さまから切符の買い方を尋ねられたので説明をし、購入していただいた後にお客さまが有人改札口から入場しようとしたため、自動改札機の利用を案内したところ、突然左頬を殴られた。

・お客さま対応中、別のお客さまから話しかけられたため、「しばらくお待ちください。」とお断りをして先のお客さま対応を継続したところ、後から来たお客さまに顔面を殴打された。

加害者本人は「酒の勢いで」と弁明するかもしれないが、文面化して客観視すれば明らかに理不尽、不条理の行為であることが分かる(無論他の理由による該当行為もまた、正当性は無い)。

中には「自分はお客の立場で偉いのだから、多少の行為は許容範囲である」と横柄な考えを持つ人もいるかもしれない。しかしそれは思い違いでしかなく、鉄道係員が対象で、自らがお客の立場であっても、そして泥酔していたとしても、これらの行為は犯罪行為には違いない事実を改めて認識すべきである。



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