気象庁、エルニーニョ現象の発生を確認、冬まで続くとの観測

2012/08/13 06:40


夏気象庁は2012年8月10日、エルニーニョ/ラニーニャ現象に関する定期報告において、エルニーニョ現象が発生したとみられること、この現象が冬まで持続する可能性が高いことを発表した。今後インド洋から太平洋西部、北米の東西海外において、平年より海面水温が上昇する可能性が高く、気象、そして農作物の作柄動向にこれまで以上の留意が求められることになる(【発表リリース】)。



「エルニーニョ現象」とは太平洋赤道域の日付変更線付近から南米のペルー沿岸にかけての広い海域で、海面水温が平年を上回る現象(ラニーニャは下回る現象)。この現象が発生すると、世界規模で天候のイレギュラーな変異が起きる場合が多い。

↑ 平常時とエルニーニョ現象時
↑ 平常時とエルニーニョ現象時(【気象庁解説ページ】から)

エルニーニョ現象が発生すると、日本では「春…高温」「夏…低温」「冬…高温・少雨」(平年比)の動きが起きやすくなる。また世界規模で見ても穀物栽培地域で少雨・高温などのイレギュラー的な天候になりやすく、収穫量に大きな変動が生じやすい。今後エルニーニョ現象が予想通り冬まで続くことになれば、その影響は(程度や現象そのものの範囲にもよるが)大きくなる。

↑ エルニーニョ現象に伴う6-8月(北半球の夏)の天候の特徴
↑ エルニーニョ現象に伴う6-8月(北半球の夏)の天候の特徴(【気象庁解説ページ】から)

今回気象庁では、7月の時点で「エルニーニョ現象が発生したとみられる」とすると共に、この現象が少なくとも今冬まで続く可能性が高いと説明している。【昨月7月の時点】では「エルニーニョ現象もラニーニャ現象も発生していない平常の状態」としながらも「夏の間にエルニーニョ現象が発生する可能性が高い」と予報を伝えており、これが正しかったことになる。

FAO(国連食糧農業機関)は2012年8月9日、定例の世界食料価格指数(FAO Food Price Index)を発表すると共に(【20年あまりの世界の食料価格の推移をグラフ化してみる(2012年7月分反映版)】)、昨今の少雨・高温・干ばつにより、特にアメリカのトウモロコシやロシアの小麦が影響を受け、大きな価格上昇を招いたこと、2008年の食糧需給のひっ迫時に穀物・砂糖の価格が近づいており、留意を払う状況にあるとを伝えている(【FAO Food Price Index up 6 percent】)。

もっとも2008年の穀物価格上昇は、多分にサブプライムローンショックに始まる金融危機で株式市場が下落し、行き場を失った投資資金が先物市場に流入し、それが相場上昇を後押しした一面もある。また穀物・砂糖の価格指数共に、まだ直近5年間における高値には届いていない(穀物はギリギリのレベルだが)。

↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2012年7月)(総合・砂糖・穀物のみ)
↑ 各食料価格指数推移(FAO)(2007年-2012年7月)(総合・砂糖・穀物のみ)

天候・気象は人間の手でコントロールできる類のものでは無い。それだけにさまざまな可能性を検証し、十分以上に留意し、対策を講じておく必要が求められよう。



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