鹿島、東京都千代田区の100メートル超ビルを「だるま落とし方式」こと「鹿島カットアンドダウン工法」で解体

2012/11/01 06:45


鹿島カットアンドダウン工法【鹿島(1812)】は2012年10月31日、2008年に実用化した中高層ビルの解体方式「鹿島カットアンドダウン工法」のさらなる環境性能向上と短工期化を図り、今回100メートルを超える超高層ビル「りそな・マルハビル」(東京都千代田区大手町)の解体工事へ適用すると発表した。工事そのものは既にスタートしており、2013年1月31日には終了する予定(【発表リリース】)。



↑ 鹿島カットアンドダウン工法によるビルの解体概要。地上階で解体作業を実施し、フロアをジャッキダウン
↑ 鹿島カットアンドダウン工法によるビルの解体概要。地上階で解体作業を実施し、フロアをジャッキダウン

一般の工法
●一般の工法
最上階に作業機材を上げ、その機材などで解体、
逐次解体した素材を下に降ろしていく。
「鹿島カットアンドダウン工法」は【人と環境にやさしい「だるま落し」・鹿島が新ビル解体工法実用化】でも解説しているが、子供の遊び「だるま落とし」のようにビルを解体していく工法。素人目で不安要因として考えられるのは、作業中の強度問題。建物を支える基礎部分と上部の構造が、「だるま落し」をする地上付近の解体作業階で切断された状態になるため、建物の「背骨」が寸断され、作業中に地震が起きると建物そのものが転倒する可能性が出てくる。そこで建物内部に「コアウォール」という補強を行うなどして、安全性を確保する。その上で「ジャッキで固定」「地上に近い作業階を解体」「ジャッキを降ろして上層階を降ろす」「新たに出来た作業階を解体」を繰り返すことになる。

↑ 「鹿島カットアンドダウン工法」概要。①ジャッキの挿入(準備工事)②梁・床の解体 ③柱の切断、撤去(約700mm)④ジャッキ伸長、柱再支持 ⑤ 全ジャッキの収縮(建物ジャッキダウン)の繰り返し
↑ 「鹿島カットアンドダウン工法」概要。①ジャッキの挿入(準備工事)②梁・床の解体 ③柱の切断、撤去(約700mm)④ジャッキ伸長、柱再支持 ⑤ 全ジャッキの収縮(建物ジャッキダウン)の繰り返し

今回のりそな・マルハビル解体工事では新たに、地上1階部分に施工設備を集約・固定できる特長を生かして、粉じん飛散量や騒音の伝播、景観など、環境への影響を高精度の解析評価を実施し、最適な仮設計画にするとともに、騒音と逆位相の音で能動的に騒音を低減させるアクティブノイズコントロールや粉塵を効果的に抑える「マイクロECミスト」などの新技術も適用。周囲への影響をより減少させる。また、躯体(くたい。骨組み・構造体のこと)1フロアを最短3日で解体する超短工期化により、依頼客から要望の多い、建替期間の短縮化も図っている。

りそな・マルハビルは高さ108メートル、24階建てという鉄骨造の超高層事務所ビルで、大手町という都心にあるため、特に周囲への影響を可能な限り排除する必要があった。そこで2012年9月から高層棟の柱40本すべてをジャッキに受けかえる工事を行い、同年10月24日から約3か月間で23フロアのジャッキダウン解体を行っている。

従来は煙突や鉄塔などの工作物の解体に適用されていたこの解体工法、写真にあるように一定の高さにまで低くならないと、解体工事をしていること自体気がつかれない可能性すらある(遠くから見た場合)。発想としてはありがちだが同時に非常にユニークで、実践するとなると色々なノウハウの蓄積が必要とされる。今回都心部で実施されることにより、大いにデモンストレーション効果も発揮され、さらに注目を集め、ビル密集地帯での解体工事で歓迎されるに違いない。



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