【更新】救難飛行艇US-2 量産型初号機、初の災害派遣実施
2009/03/15 09:35
防衛省は2009年3月7日、海上自衛隊が東京都知事からの災害派遣要請を受けて、救難飛行艇US-2により、南鳥島からの緊急患者輸送を行ったことを発表した。今回の緊急輸送は先日【救難飛行艇US-2 量産型初号機、防衛省に納入】でお伝えした、新型救難飛行艇US-2による初の災害派遣である([発表リリース])。
量産型初号機の勇姿
「US-2型救難飛行艇」は、同じく【新明和工業(7224)】が開発・生産していた「US-1A型救難飛行艇」の後継機として開発されたもの。2009年2月19日に海上自衛隊に納入された。同機は2005年度に防衛省(当時)と新明和工業が契約を交わした後、2年にわたって実施された試作機の技術・実用試験の結果をうけ、一部設計を変更して製造された機体。2007年か4月から本格的な製造に着手し、2008年12月には初飛行試験が行われている。
今回の派遣は、東京都知事が海上自衛隊第31航空群司令に対し東京都南鳥島における要救助患者の急患輸送を要請し、それに応じた3月7日午前1時15分に発令されたもの。同航空群第71航空隊(岩国)のUS-2×1機が発令4分後の1時19分に離陸、4時間後の5時19分には南鳥島に着陸。6時18分には同島を離陸し、10時41分には羽田空港に「着陸」。10時55分には患者を救急車に引き渡して任務を達成し、11時40分に状況終了を確認している。
先の記事でも説明したように、飛行艇の「水陸両性」は飛行場の無い、あるいは利用できなくなった離島や被災地へのアクセスを可能とするほか、災害時に柔軟性の高い機動力を誇る輸送・偵察能力を持つ「ふところ刀」として欠かせない存在。一方、南鳥島には現在一般市民はおらず、気象庁や海上保安庁、海上自衛隊の職員が常駐するのみで、1.4キロメートルほどの滑走路もあり、通常の飛行機(YS-11やC-130Hなど)も離着陸が可能。しかし周辺に類似の島が無く「万一」の時に緊急着陸が困難なことから、即時対応性が高いことに加えて、柔軟性にも富んだUS-2に出動要請が下されたものと思われる。
大きな地図で見る
南鳥島。さらにズームアウトするとわかるように、言葉通り絶海の孤島。
飛行艇は単純なランニングコストで計算すれば効率が悪いかもしれないが、今回のような「費用換算を度外視しても必要な事態」には必要不可欠なものとなる。同機が活躍する場面そのものが発生しないことが一番だが、今回のようなことが起きてもすぐに対応され、無事に任務が果たせることを願いたいものだ。
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