総務省、実在する具体的事例を挙げてテレビ局の「制作会社いじめ」を指摘・状況改善を要請

2009/07/11 18:10


テレビ制作会社イメージ総務省は2009年7月10日、テレビ局が番組制作の下請け会社に対してその立場を利用し、不公正な取引を強いる、いわゆる「下請けいじめ」「制作会社いじめ」について、これを是正するためのガイドライン第2版を公開した。「買いたたき」「出資強制」「不当な給付内容の変更ややり直し」など、各種事例について事細かに、関連法令とあわせて記載されており、NHKや地上波民放各局に対して通知されることになる(【発表ページ】)。



テレビ放送の質に対する問題の大きな要因とされている制作会社の処遇問題については、先に【「強引な値切りの中止」「派遣などの労働条件改善」を・テレビ制作現場が放送局に直訴】でも触れているように、制作会社側が現状の公知と放送局に対する直訴を行う形で要望書を提示。これと前後して総務省側も2008年1月に【「放送コンテンツの製作取引の適正化の促進に関する検討会」を開催し】、ガイドラインの作成に着手。2009年2月25日にはガイドラインの第一版が完成していた(【「放送コンテンツの製作取引適正化に関するガイドライン」の策定について】)。

今回発表されたガイドライン第二版は、第一版に具体的事例を付け加えた、より詳細なもの。例えば、

・放送局側が製作委員会(資金面の調達などの負債リスクの分散や出資などの金銭面、その他事務執行のために組織化される任意組合)に参加していないにも関わらず、委員会が承諾しかねる局印税(「放送したから宣伝できたよね、じゃあDVD・海外販売時の”二次利用収益の”収益分けてよ」)や二次利用許諾の放送局側の窓口化を要求。異議申し立てをすると「それでは放送できない」と揺さぶりをかける。
 →独禁法及び下請法抵触の可能性を示唆

・番組のテーマ曲を制作していた音楽出版社が、制作した曲の著作権を放送局の子会社音楽出版局へ譲渡することを強要された。いわく「子会社の音楽出版局へ譲渡しなければ曲の依頼は行わない。他にも具体的に「楽曲の著作権の無償譲渡」「著作権収入について数分の一を数年間局側に納めるように」「楽曲対価を著しく低額に」などの要請も。過去にこれらの要請に対して異議を申し立てると、取引の停止を示唆された。
 →下請法「買いたたき」や「不当な経済上の利益の提供要請」項目の抵触可能性

などのように、具体的にどのような「問題行為」が放送局側から制作会社になされているかが説明されている。

リスト化された項目は「下請法を回避するため放送局側によるトンネル会社の作成」「発注書・契約書の不備」「支払期日の起算日問題」「不当な経済上の利益の提供要請」「買いたたき」「不当な給付内容の変更及びやり直し」「出資強制」「放送番組に用いる楽曲に係る製作取引」「アニメの製作発注」「契約形態と取引実態の相違」など。それぞれについて具体的固有名こそ挙げないものの、詳細な方法・手口と問題点、抵触しうる法令、そして総務省による改善すべき点・見本などが提示されている。

具体的事例は、リリースによれば「上記検討会における検討結果に加え、総務省において実施した関係事業者に対する番組製作取引実態に係るヒアリング調査等を踏まえて策定したものである。ガイドラインで取り上げている取引事例は本調査結果を基にしたものである」と説明されており、事例を説明するために創作された話ではなく、実在した(している)問題を元にしたものであることが分かる。これまで「うわさ」や「与太話」的に伝えられてきた放送局と各制作会社との様々な「問題関係」が、公的機関の発した種類によって明記されたという点で、非常に重要視される・資料性の高い内容となっている。

また、各事例について抵触しうる法令が下請法、独占禁止法、民法などを中心に多数列挙されているということは、言い換えればこれらの法令に抵触しうる行動を、放送局側が番組制作のたびに数限りなく繰り返してきた可能性を示唆している。



制作会社いじめイメージ第一版のガイドライン公開や、下請け会社からの要請に対し、【制作会社の状況改善なるか?! 日本テレビが制作会社に着手金支払いを決定へ】のように、一部では改善を模索する動きも見られる。しかしその動きはまだ少数派で、全体的には状況の進展はあまり見られない。むしろ【4大既存メディア広告とインターネット広告の推移をグラフ化してみる(2009年7月発表分) 】にも記されているように、テレビへの広告費そのものが削られる昨今、状況は悪化している可能性もある。

今回発表された「具体的事例」を伴う「法令違反の可能性」の「公的機関からの指摘」と「改善要求」に対し、各放送局はどのような姿勢を見せるだろうか。今件と、その対応に向けた報道のされ方をあわせ、注意深く見守りたいところである。



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